「夫はね、私のこと、全然気付いていないんです」
少しの沈黙の後、語り始めた50代後半の女性。
彼女は長年連れ添ったご主人に嫌気がさしています。
夫の定年退職後か、子どもの就職後に離婚を考えているとの事でした。
どちらに非があるのか、それとも非なんてないのかわかりませんが、この女性は離婚をひそかにたくらんでいるのです。
自分の人生ですから、離婚するしないは本人が決めたらいいことのなのですが、いしだの胸にひっかかるのもがありました。
深く息を吸ってから、その女性はさらに話し始めました。
「私、付き合っている人がいるんです。15歳年下で、夫と違って情熱的な人です」
あぁ・・・やっぱりね。
いくつになっても人を好きになるのは悪いことではないけれど、カン違いしちゃダメ!
浮気や不倫は、「秘密」や「背徳」のスパイスがあるから魅惑的なんです。
恋にのぼせ上がっているうちは、あばたもエクボ、相手の欠点なんて見えません。
付き合いが長くなってきたときに価値を発揮するのは「誠実さ」なんです。
いまのこの女性に誠実さはありません。
夫に難癖をつけて、離婚の理由を夫のせいにして、離婚後は付き合っている恋人と一緒になろうなんて、ムシがよすぎます。
出会う人は合わせ鏡、自分が正直であれば出会う人も正直さに価値を置く人です。
自分が不誠実なら、やはり不誠実な人と縁ができてしまうのです。
はたしてこの女性の恋人は離婚してでも選ぶだけの価値がある男性なのでしょうか?
女豹が獲物を狙うようなぎらぎらした目と、それに不釣合いな口元の笑みが、彼女の心のうちを表しているようです。
一刻も早く頭を冷やしてくださいと思わすにはいられませんでした。
計画が上手くいかなくても、それは自業自得ですよ。
不誠実なことは自分に跳ね返ってくるものなのですから。