最初、Y子さん(40代後半)が尋ねて来られたときは、ため息まじりで、暗い表情でした。
長男は大学を卒業して遠方に就職、勤務する会社で重役のご主人と、専門学校生の長女との3人暮らし。
会社ではデキるビジネスマンのご主人も、家ではかなりの暴君。特に妻であるY子さんに対しては、言葉の暴力、態度の暴力、そして実際に手を上げることも多いそう。
Y子さんは、本来外で仕事をしていたかったのですが、ご主人の希望で長く専業主婦でした。ずっと自分の気持ちを押しとどめ、我慢してきたため、心療内科に通っていました。
「お母さん!もう十分お父さんに我慢してきたんだから、好きにしてもいいよ!」
ある日長女からの力強い励ましで、自分の世界を取り戻す決意をしました。
働くことが好き、仕事をみつけよう!と。
ハローワーク通いが始まりました。勉強熱心なY子さんは販売職の資格に挑戦するとこにしました。
とにかく社会に出たかったY子さんは、待遇にこだわらず、パートタイムで個人商店に通うことにしました。
ここからY子さんの人生は好転していきます。
資格に合格した頃、別のショップから引き抜きの声がかかりました。
新しい職場で頼りにされて働き、仕事が楽しくて仕方ありません。
自分に自信を取り戻したY子さんは、思い切って離婚届をご主人に突きつけました。
ご主人は離婚に同意しました。
でも、今も同じ家にご主人と長女と3人で暮らしています。
ご主人の暴力は止みました。
Y子さんが家を出ようと思えばいつでもできます。
Y子さんは自信を取り戻したのと同時に、自由と尊厳も手に入れたのです。もちろん収入も。
Y子さんは以前とは見違えるほど明るく変わりました。白い歯を見せて笑うY子さんはとてもチャーミングです。
離婚はしたものの、きっとご主人はY子さんを手放せないでしょう。
でももうY子さんは大丈夫。
離婚で全ては解決しないけれど、自分で決意をし、行動することで人生を変えていくことができるのです。
自分が変わることで、相手や状況を変えてしまったY子さんを見て、いしだたかこは女性のしなやかな強さを改めて認識しました。