アルコール依存症をひとことでいうと、「大切にしていた家族、仕事、趣味などよりも飲酒をはるかに優先させる状態」です。
具体的には、飲酒のコントロールができない、離脱症状がみられる、健康問題等の原因が飲酒とわかっていながら断酒ができない、などの症状が認められます。(厚生労働省HP みんなのメンタルヘルスより抜粋)
心身の健康を害する以外に、対人関係の悪化、犯罪、事故、家庭崩壊、経済的な破綻などを引き起こします。本人の問題だけでなく、社会問題ともなっています。
酒酔いは、単純酩酊 → 複雑酩酊 → 病的酩酊 の順にその程度が進んでいきます。
【病的酩酊】
意識障害や普段の人格からは想像もできないような異常な言動が見られます。
酔いが醒めた後、記憶がないことが多いのが特徴です。
【アルコール依存症 診断ガイドライン】
過去1年間に以下の項目のうち3項目以上が同時に1ヶ月以上続いたか、または繰り返し出現した場合
1. 飲酒したいという強い欲望あるいは強迫感
2. 飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関して行動をコントロールすることが困難
3. 禁酒あるいは減酒したときの離脱症状
4. 耐性の証拠
5. 飲酒にかわる楽しみや興味を無視し、飲酒せざるをえない時間やその効果からの回復に要する時間が延長
6. 明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒
(WHOのICD-10診断ガイドラインによる)
【治療方法】
1. 入院して身体合併症や離脱症状の治療を行います。体内のアルコールを減らしていきます(解毒治療)
2. 精神や身体症状が改善してきたら、断酒のためのリハビリ治療を行います。
3. 通院に切り替わったら、抗酒薬の服用や自助グループへの参加を行いながら断酒を継続していきます。
入院治療だけでも数週間から数ヶ月に及ぶこともあり、アルコール依存症からの回復には何年もかかります。
途中で再飲酒してしまうと振り出しに戻ってしまうので、本人の努力だけでなく家族の協力が欠かせません。
【治療の覚悟】
アルコール依存症は「完治」は困難で、「断酒を継続する」ことが目標です。
治療を始めたら、本人はもとより家族全員の生活が一変することになります。
仕事柄、接待をしなければいけない立場の人にとって、飲酒できないのは職務遂行に支障が出るでしょう。
飲み会への参加は、どうしても人から勧められて再飲酒しがちです。
→治療を公言していても、「一口ぐらいはいいだろう」と言って進めてくる人はいます。
冠婚葬祭にもアルコールは付き物です。
→「祝いの酒が飲めないのか」と言われて気まずい雰囲気になったりします。
ですから治療を始めたら、仕事を変える必要があったり、友人や親戚との付き合いが疎遠になりやすいです。
特に抗酒剤を服用中は微量のアルコールにも身体が反応してしまうので注意が必要です。
家のアルコールを置かない事は必至なので、キッチンに料理酒やみりんなどを使った料理(あさりの酒蒸し、肉じゃが、ビーフシチューなど)は作れなくなります。
また外食はもちろん弁当、市販の栄養ドリンク、洋菓子・和菓子などにも風味付けにアルコールが含まれていることが多いので、うっかり口にしてしまうと、抵酒剤の反応が思わぬところで出てしまいます。
アルコール依存症の治療とは、こうして飲酒をしない日を一日一日延ばしていくことなのです。