拝啓
しっかり者の娘をお持ちのお母様。
大切に育ててこられたお嬢様が長じてからは、何でも話し合える母娘になられたことはお母様の誇りですね。
そのお嬢様が人生の伴侶を得たはずなのに、結婚生活に苦しんでいるのをご覧になるのは大変お辛いことと存じます。
そして人生の先輩としてお母様の体験やお考えを通じて、お嬢様と苦悩を分かち合っているお姿には頭が下がります。
お嬢様が聡明な方であることはお話しをしていても分かります。
お嬢様はお母様が思うよりずっと大人でいらっしゃいます。
そして心の底では自分が妻としてどうしたいのか、どうすべきなのかも分かっていらっしゃいます。
ただそれはお母様のお考えとは少しだけ異なっています。
自分の考えを貫くことはお母様の生き方を否定してしまわないか、それによってお母様を傷つけはしないかが心配なのです。
お嬢様はお母様のことが大好きなのです。
お母様がお嬢様を愛していらっしゃるように。
だからこそ、お嬢様が安心して自分の考えで行動できるように見守っていてあげてほしいのです。
真の解決とはきちんと問題に向き合うことで成し得ることであって、逃げ道を用意することではありません。
「問題」はお嬢様とお母様の間で発生しているのではなく、お嬢様とその夫の間にあります。
「問題」はお嬢様が夫と精神的に対等になり、一対一で向き合わない限り解決しません。
「問題」を一つずつ解決していく中で人は成長して強くなります。
今お母様がやってはいけないこと。
それは早く安心することが目標になってしまって、お嬢様に結論を急がせてしまうことです。
お母様の手助けが、お嬢様の成長のチャンスを奪ってしまっては駄目なんです。
お母様がお元気なうちはお嬢様を支えることが出来ても、いつかお母様もお歳を重ねていかれます。
お母様に支えが必要になったとき、お嬢様に支えてくれる人生の伴侶がいらっしゃらなかったり、精神的に未熟なままであったら困るのはお嬢様本人です。
「問題」を乗り越えていける賢さをお嬢様はお持ちです。
お嬢様はいま大きな選択をすべきかどうか迷っていらっしゃいます。
その結論を出すには時間がかかってもいいのです。
どうか口を挟まず手を出さず、辛抱強く見守っていてあげて下さい。
どうかそっと見守っていてあげて下さい。
敬具