「いしだ先生は離婚はしないほうがいいとおっしゃいますけど、私は違うと思います!」
地方の団体職員として働くM美さん(40歳代)は独身です。
M美さんは開口一番、ストレートにご自身の考えを述べられました。
「離婚したい人はさっさと離婚して、次の人生に進んだらいいんです。
周りの人を巻き込んで、嫌な思いを押し付けて、本当に迷惑なんですから」
聞けば、M美さんは幼い頃から父と母が不仲で、両親に振り回されるたびに早く離婚してくれたらいいのに、と思ってきたそうです。
母親は「離婚したい、離婚したい」と言いつつ、70歳を超えた今でも離婚せずに夫を憎んでいるのだそう。
M美さんの目には怒りと、哀しみが宿っていました。
M美さんのお母様とお話したのではありませんので、お母様の心中は測りかねますが、何十年と離婚せずにきたというのは、やはりお母様は結婚生活に不満があっても離婚はしたくないのだと思います。
これまで不満と不満を天秤にかけた結果、他の不満より離婚の方が我慢できる不満であったのでしょう。
いまや3組に1組のカップルが離婚している時代です。
M美さんの言葉のように、離婚したいと思ったら、さっさと離婚できる時代なのです。
憎しみは期待が外れたときの失望から生まれることがあります。
そして世の中には、不満をアピールすることでしか自分の正しさを主張できない立場(考え方)の人がいるのも事実です。
この場合は離婚しようがしまいが、人生の中に不満を探し続けることになります。
M美さんのお母様はずっと夫に期待をしては裏切られてきたのかもしれませんし、身近なところに何かしら「正しくないもの」を見つけてしまうタイプなのかもしれません。
また物事は自分の思い通りにならないことは誰でもわかっていることです。
つまりもともと世の中は不満であふれているのです。
だからこそ自分の意思で人生を決めていないと、不都合な結果が生じたときにそれを受け入れられなくなります。
人生を受身で生きると、被害者意識ばかりが大きくなるのです。
さて、話をM美さんのお母様に戻します。
一般的には夫の方が妻より早くに先立つことが多いので、このまま離婚せずに妻の座を死守しても損はありません。
ただ、お母様は「本当は離婚したかった」との思いがぬぐえないでしょうから、財産分与や生前贈与の法的な手続きをしっかりした上で、自己実現の手段として離婚してもいいでしょう。
結婚して40年以上経っています。
今さら離婚しても、夫婦の距離や子ども(M美さん)との関係性に大きな変化はないでしょう。
むしろ離婚して夫婦が赤の他人になることで、お互いを冷静に見つめなおすことができるかもしれません。
ただ夫婦のことは夫婦にしか分からないことがたくさんあります。
いくら子どもでも、親の離婚に口出しをするべきではありません。
また親であっても、子どもの離婚に口出ししてはいけません。
あくまでも当事者が決めないといけないことです。
自分で決めたことを受け入れる、という覚悟とふんぎりは離婚においても重要なことです。